「満州事変 政策の形成過程」緒方貞子(岩波現代文庫)

本書は緒方貞子さんがUCバークレーに提出された博士論文が書籍になったものである。知っているようで、あまりよく知らない。あるいは、自分の見解を持つほどの知識は持ち合わせていない満州事変

この本を読み進め、自分の見解を持つほどにはまだ知識が整理されていないが、いろいろな時代背景があり、様々な人が様々な思いや欲望を抱え、満州事変に突入してしまったということを、わずかながらではあるがより良く知る機会となった。備忘的に以下記しておきたい。

  • 日本の満州進出に関し、同じ帝国主義的利害関係を持つ、欧州列強は日本に同情的あるいは日本の満州進出に関し、十分妥協する準備があった。一方、米国にはそのような心情はあまりなかった。ただし米国は極東で日本と戦争を始めたいとは全く思っていなかった。
  • 日本の満州進出は当時の欧米列強にとっては、極東におけるソ連邦あるいは共産主義帝国の進出を阻む防波堤の役割を期待していた節がある。
  • 515、あるいは226に象徴される青年将校の行動を抑えられなかった、あるいは処罰できなかった背景には、当時の日本の資本家・財閥と政党政治との腐敗し切った関係と、それによる貧富の差が時代はいけとして厳然とあった。
  • 満州進出が日本国民に支持された理由は、単に政府・軍・新聞によるプロパガンダがフルに機能したというよりは、当時の悲惨な経済的状況を解決する場としての満州、そしてそこで喧伝されている民衆の利益を第一とする国家社会主義的考え方に、多くの国民が魅力を感じたからであろう。
f:id:msugioka:20160111195616j:image