Modern Money Theory(MMT理論)

通貨発行権を持つ政府が、自国通貨建てで借金をするのに躊躇する必要は無し。インフレの兆しが見えた時点で、財政措置、金融政策を遅滞なく実施すればOK』MMTを要約するとこういうことであろうか?

 

MMT擁護派、懐疑派、反対派、いろいろと議論が喧しい。MMTは理論というよりは、ある種の政策の説明のためのフレームワークと考えれば、納得できる部分が多い(MMTに関する書籍は一冊も読んでないけど。。。)。

 

MMT反対派は良識派が多く、MMTに対しては過去に起こったハイパーインフレ等を引き合いにして、これは理論ですらないと全否定。良識派は頭がよく、先が見通せるのでリスクを敏感に察知し、問題が生じる前に問題の芽を摘むことにより、問題を回避したり、被害を限定することができる。だからこそ、リスクを議論しないMMTが受け入れられない。

 

それに対してMMT擁護派は有象無象の集合で、まともな人もいれば、そうでない人も多い。とはいえ、MMTの「ハイパーインフレの兆しが具体的に見えてきた時点で初めて、ブレーキを踏めばよい」というのは、実はそれが一番正しい回答かもしれないと私は思う。良識派のロジックだと、ハイパーインフレの兆しが見えない中で国債残高が多いという理由で経済にブレーキをかけ、それがいつまで続くのか見通しがないというわけなので、何のための(誰のための)経済政策なのか理解に苦しむのだーつまり、説得力に欠ける。

 

一方、MMT正統派の言説によれば、ハイパーインフレの兆しが見えるまでは、経済の落ち込み時には遠慮なく国債を発行してアクセルを踏んで、経済を回せばよいということなので、皆に受け入れられやすい。何せ先のこと(具体的に、いつ、どの程度のハイパーインフレが生じ、どのような過程を経て終息に向かうのか)は誰にも分らないのだから。だからこそ、ハイパーインフレの兆しはっきりと見えた時点で、ブレーキを踏めばよいというわけだ。

 

だがしかし、「ハイパーインフレの兆し」というのは、わかりやすい指標のような形ではっきりと分かるようなものなのだろうか?仮に、分かったとしても、どの程度強く長くブレーキを踏めばよいのか分かるのだろうか?そして、経済政策の実行者は本当に実際に迅速にブレーキを踏むことができるのだろうか?おそらくは無理だろう。ハイパーインフレの兆しが見え始めたところでゆっくりと議論が始まり、ずるずると決定が先延ばしされ、ハイパーインフレは着実に訪れるのだろう。

 

翻って、個人としては何ができるのだろうか?答えはシンプル。ストック(資産)には頼れないと覚悟を決め、将来的にどのような状況下でもフローで生き延びていけるため(継続してキャッシュを稼ぐことのできる能力をつけるための)の投資をすることに尽きる。ただ、年寄はどうすればよいのか?ストックを見直すしかない、できることは限られているのだ。

 

資産を金融資産(非居住用不動産を含む)と生活資産に分け、前者の比率を極力圧縮し、後者に振り替える。具体的には、より良質の住宅に住み替える(利便性、広さ、建材の品質を良質化すれば、幸せになれる)、貯蓄を取り崩して早めに耐久消費財を高品質のものに買い替える、或いは趣味性の高い耐久消費財を購入する等である。これらの施策により、将来の手元流動性に不安は増えるが、ハイパーインフレで紙くずになる場合よりはましだし、これらの消費活動により多少は経済に貢献することにもなる。そして、良質の不動産は、最悪の場合には、売却できる可能性もあるのだ。

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